世界のまん中には、それはそれは大きな木が立っていました。名前はユグドラシル。空の雲まで届くほど高くて、根っこは地球の奥深くまで伸びていました。

そのてっぺんには、賢い大きなワシが住んでいました。そして、ずーっと下の根っこには、ニズヘグというちょっぴりいじわるな竜が、いつも根っこをガジガジかじっていました。

さて、このユグドラシルの木には、とっても忙しいリスがいました。名前はラタトスク。ラタトスクは、この大きな木を、毎日タタタタッ！と駆け上がったり、スルスルスルッ！と駆け下りたりしていました。

どうしてそんなに忙しいかって？それはね、てっぺんのワシと、根っこのニズヘグの間に、メッセージを届けるお仕事をしていたからです。

ある日、ワシが言いました。「おい、ラタトスク。下のニズヘグに伝えてくれ。『おまえが根っこをかじる音がうるさくて、昼寝もできんわ！』ってね。」
ラタトスクは「はい、かしこまりました！」と元気よく返事をして、木の幹をスルスルスルッ！と駆け下りていきました。

そして、ニズヘグのところへ着くと、こう言いました。「ニズヘグさん、ニズヘグさん！上のワシさんがね、『おまえのせいで、ぜーんぜん静かにならない！もっと静かにしろ！』って、すっごく怒ってましたよ！」
それを聞いたニズヘグは、シューッ！と鼻から煙を出して怒りました。「なんだと！あいつこそ、いつも空でバサバサうるさいじゃないか！ラタトスク、伝えてこい！『おまえの羽の音の方がよっぽど迷惑だ！』ってな！」

ラタトスクは「はい、かしこまりました！」と、またタタタタッ！と木を駆け上がりました。
ワシのところへ着くと、息を切らしながら言いました。「ワシさん、ワシさん！下のニズヘグがね、『あなたの羽の音のせいで、こっちは迷惑してるんだ！静かに飛べ！』って、ものすごーく怒ってました！」

ワシはそれを聞いて、カッカと頭に血がのぼりました。「なんですとー！」

ラタトスクは、ワシとニズヘグの間を何度も何度も行ったり来たり。本当は、ワシもニズヘグも、そこまでひどいことは言っていないのかもしれません。でも、ラタトスクがちょっぴりお話を大きくして伝えるものだから、二人はいつもお互いにプンプン怒っていました。

ラタトスクは、そんな二人の様子を見ながら、木の幹を登ったり下りたりするのが、なんだかちょっぴり楽しかったのかもしれませんね。今日もユグドラシルの木の上で、ラタトスクの忙しい一日が続いています。

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