• ヘイムダルと虹の橋

    北欧神話
    空のずーっと上の方、神さまたちが住んでいるアスガルドという素敵な場所がありました。そこには、地上からアスガルドへとかかる、それはそれは美しい虹の橋、「ビフレスト」があったのです。この橋は、赤、黄、緑、青、いろんな色がキラキラと輝いていて、まるで空に架かる宝石のようでした。

    この大切な虹の橋を、たった一人で守っている神さまがいました。彼の名前はヘイムダル。ヘイムダルは、とっても特別な力を持っていたんですよ。
    まず、耳がすごくいいんです。地面で草がそよそよと伸びる音も、遠い国で羊の毛がふわふわと生える音だって聞こえちゃう。目もすごくて、何百キロも先までくっきり見えるんですよ。だから、悪いやつらがこっそり橋を渡ろうとしても、ヘイムダルにはすぐ分かってしまうのです。
    そしてね、ヘイムダルの歯は金色にキラキラ輝いていました。それに、鳥さんよりもずっと少ない時間しか眠らないので、いつでも橋をしっかりと見張っていられるのです。

    ヘイムダルの大切なお仕事は、このビフレストを通って悪い巨人たちがアスガルドに入ってこないように、見張ることでした。巨人たちは、いつも神さまたちの邪魔をしようと、こっそり橋を渡ろうと狙っていましたからね。
    でも、ヘイムダルがいる限り、そう簡単にはいきません。彼が橋のたもとにどっしりと立っているだけで、巨人たちもおいそれとは近づけませんでした。

    ヘイムダルは、いつも「ギャラルホルン」という大きな角笛を持っていました。もしも大変なことが起きて、巨人たちが大勢で攻めてくるような時が来たら、この角笛をブオーッと吹いて、アスガルド中の神さまたちに知らせるのです。その音は、世界の隅々まで届くと言われています。

    毎日毎日、ヘイムダルは虹の橋のたもとに立って、遠くを見つめ、耳を澄ませていました。
    「今日もアスガルドは平和だな。よし、誰も悪いやつは通さないぞ!」
    キラリと光る金色の歯を見せて、頼もしく橋を守り続けていたのです。

    だから、神さまたちは安心してアスガルドで暮らすことができました。虹の橋の番人、ヘイムダルのおかげですね。

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