• アース神族とヴァン神族の戦争

    北欧神話
    空のずっと上の方、雲よりもっと高いところに、アース神族っていう元気いっぱいの神様たちが住んでいるアスガルドという場所がありました。リーダーは、片目だけどとっても賢いオーディンです。彼らは強くて、戦いが得意でした。

    さて、別の場所、ヴァナヘイムには、ヴァナ神族という神様たちが住んでいました。こちらの神様たちは、自然を愛し、魔法が得意で、豊かさや平和を大切にしていました。

    ある日、アスガルドにグルヴェイグという、金ピカが大好きな不思議な女の神様がやってきました。彼女は「金は素晴らしいよ!もっともっと集めよう!」ってみんなに言って、アース神族の神様たちも、なんだか心がザワザワし始めちゃったんです。オーディンは「これはいけない!みんなが欲張りになってしまう!」と思って、グルヴェイグを捕まえて、なんと三回も火の中に入れました。でも、あら不思議!グルヴェイグは三回とも灰の中からピンピンして生き返ってきたのです。

    アース神族は「これはきっと、ヴァナ神族が送り込んできたに違いない!」と怒り出しました。一方、ヴァナ神族も「私たちの仲間(あるいは魔法を使う者)であるグルヴェイグをひどい目にあわせるなんて!」とカンカンです。

    こうして、アース神族とヴァナ神族の間で、大きな大きな戦いが始まってしまいました。オーディンが槍を投げ、戦いの火ぶたが切られました。長い間、戦いは続きましたが、どちらも強くて、なかなか勝負がつきません。

    「もう戦うのはやめにしよう」と、とうとう両方の神様たちが話し合いました。そして、仲直りの印として、お互いに大切な神様を人質として交換することにしたのです。

    ヴァナ神族からは、海の神様ニョルズと、その子供たちで、美しくて優しいフレイとフレイヤがアース神族のところへ行きました。アース神族からは、見た目は立派だけど少しぼんやりしたヘーニルと、とっても賢いミーミルがヴァナ神族のところへ行きました。

    ところが、ヴァナ神族はすぐに気づきました。「ヘーニルは、ミーミルがそばにいて助言しないと、何も決められないじゃないか!」と。ヴァナ神族は騙されたと思って怒り、ミーミルの首だけをアース神族に送り返してしまいました。オーディンは悲しみましたが、ミーミルの首に魔法をかけて、これからも知恵を授けてもらえるようにしました。

    これだけでは本当の仲直りとは言えません。そこで、アース神族もヴァナ神族も、みんなで一つの大きな壺に唾をぺっぺっと入れたんです。すると、その唾からクヴァシルっていう、とっても賢くて、詩の才能がある神様が生まれました。クヴァシルは、二つの神族が本当に仲良くなった証です。

    こうして、神様たちの世界にはまた平和が戻り、アース神族とヴァナ神族は、お互いの良いところを学びながら、一緒に楽しく暮らすようになったんだって。めでたし、めでたし。

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