• 詩の蜜酒の由来

    北欧神話
    昔々、神様たちが住むアスガルドというキラキラした世界があったんだ。そこでは、時々、神様たちもケンカをしちゃうことがあった。でもある日、大きなケンカが終わって仲直りしたとき、特別な方法で、クヴァシルという、とっても賢い人が生まれたんだ。クヴァシルは何でも知っていて、みんなに色々なことを教えてあげていたよ。

    ところが、いたずら好きで欲張りな小人の兄弟、フィアラルとガラールが、クヴァシルにちょっかいを出して、大変なことになっちゃった。そして、クヴァシルの不思議な力と甘い蜂蜜を混ぜて、特別な飲み物「詩の蜜酒(しのみつざけ)」を作ったんだ。この蜜酒を飲むと、誰でも素敵な歌を歌ったり、面白いお話を作ったりできるようになるんだって!

    小人たちはその後もいたずらを続けて、スットゥングという大きな巨人を怒らせてしまった。怒ったスットゥングは、小人たちから詩の蜜酒を取り上げて、自分のものにしちゃった。そして、その大切な蜜酒を山の奥深くに隠して、娘のグンロズに見張りをさせたんだ。グンロズはとても美しい娘さんだったよ。

    その噂を聞きつけたのは、神様たちの王様、オーディン。「その蜜酒、ぜひとも手に入れたい!」オーディンは、賢くて、ちょっとずる賢いところもある神様なんだ。

    オーディンは、まず農夫に変装して、スットゥングの弟バウギのところへ行った。そして、バウギをうまく言いくるめて、蜜酒が隠してある岩山に、魔法のドリルで小さな小さな穴を開けてもらったんだ。

    穴が開くと、オーディンはヘビに変身!シュルシュル~っと穴の中へ。中には、グンロズがいたよ。オーディンはハンサムな若者に姿を変えて、グンロズに優しく話しかけた。グンロズはオーディンと仲良くなって、三日三晩、一緒に楽しく過ごしたんだ。そして、オーディンはとうとう三つの大きな壺に入った詩の蜜酒を、ぜーんぶ飲んじゃった!

    さあ大変!オーディンは急いで鷲の姿に変身して、神様の国アスガルドへ向かって空を飛んで逃げた。それに気づいたスットゥングも、大きな鷲になって「待てー!」と追いかけてきた。

    アスガルドの神様たちは、オーディンが帰ってくるのを見て、大きな壺を用意して待っていた。オーディンはギリギリのところで、口に含んでいた詩の蜜酒を壺の中に「ブハーッ!」と吐き出すことができたんだ。でも、あまりに慌てていたから、ほんの少しだけ蜜酒がこぼれちゃった。そのこぼれた分が、あんまり上手じゃない詩人さんたちの取り分になったんだって。

    こうして、素晴らしい物語や歌を生み出す「詩の蜜酒」は神様たちのものになり、時々、人間の詩人たちにも分け与えられるようになったんだ。だから、今でも素敵な歌や面白いお話が生まれるんだね。

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