空の上、雲よりもっと高いところに、アスガルドという神様たちの国がありました。そこには、それはそれは賢くて、いたずらが大好きな神様、ロキがいました。

ある朝、ロキはとってもいいことを思いつきました。「そうだ！トールの奥さん、シフのきれいな金色の髪で、何か面白いことをしてやろう！」
シフがぐっすり眠っている間に、ロキはこっそり近づいて、シフの自慢の長い髪を、ぜーんぶチョキン！と切ってしまったのです。
目が覚めたシフはびっくり！「わーん！私の髪がないわ！」
これには雷神トールもカンカンです。「ロキ！お前の仕業だな！どうしてくれるんだ！」
ロキはトールに捕まって、さすがに青くなりました。「わ、わかったよ！もっと素敵な髪を小人さんに作ってもらうから、許してくれ！」

ロキは急いで、とっても物作りが上手な小人さんたちのところへ行きました。
「お願い！シフのために、金でできた本物みたいな髪を作ってほしいんだ！」
小人さんたちは、「よしきた！」と、あっという間に金色の美しい髪と、他にも二つの宝物を作ってくれました。一つはどんなところへも行ける魔法の船スキーズブラズニル、もう一つは必ず的に当たる槍グングニルです。

ロキはこれを持って得意顔。そこで、別の小人の兄弟、ブロックとシンドリ（ブロックのお兄さん）に会いました。
ロキは言いました。「やあ、君たち。僕が持ってきたこの宝物よりすごいものなんて、君たちには作れないだろうね？」
ブロックはカチンときて、「何だって！作れるさ！もし僕たちがもっとすごい宝物を作ったら、お前の頭をもらうぞ！」と、とんでもない賭けをしました。

シンドリが鍛冶場で宝物を作り始め、ブロックはふいごで火力を調節します。
ロキは「負けるもんか」と、小さなハエに変身して、ブロックの邪魔をすることにしました。
一つ目の宝物を作っている時、ロキのハエはブロックの手にチクッ！ブロックは「痛っ！」と思いましたが、ふいごを動かし続けました。出来上がったのは、金色の毛をしたイノシシ、グリンブルスティです。
二つ目の宝物。今度はブロックの首にチクッ！ブロックは「うわっ！」と叫びましたが、我慢しました。出来上がったのは、九日ごとに同じものが八つ増える金の腕輪、ドラウプニルです。
三つ目の宝物。ロキのハエは、ブロックのまぶたに思いっきりチクッ！血が出て前が見えなくなり、ブロックは一瞬ふいごを止めてしまいました。そのせいで、出来上がったハンマー、ミョルニルは、少し柄が短くなってしまいました。

さあ、神様たちの前で宝物比べです。
オーディン、トール、フレイが審査員です。
ロキが持ってきた金の髪、船、槍も素晴らしかったのですが、ブロックとシンドリが作ったイノシシ、腕輪、そして特にトールのためのハンマー、ミョルニルはもっとすごかったのです！ミョルニルはアスガルドを守る最強の武器だと、みんな大絶賛。
賭けはブロックとシンドリの勝ち！

ロキは「しまった！」と逃げようとしましたが、トールに捕まりました。
「さあ、約束通り、ロキの頭をもらうぞ！」とブロックが言うと、ロキは言いました。
「頭はいいけど、首は賭けてないから、首を切っちゃだめだよ！」
困ったブロックですが、名案を思いつきました。「よし、それなら、お前のその嘘つきでいたずら好きの口を縫い付けてやる！」
そして、ブロックは本当にロキの口を糸で縫ってしまいました。

こうして、おしゃべりなロキは、しばらくの間、静かにおとなしくしていなければならなくなったのでした。めでたし、めでたし？

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