• 須佐之男の八岐大蛇退治

    日本神話
    空の上の国、高天原から、一人の神様が地上に降りてきました。名前はスサノオノミコト。ちょっといたずら好きで元気いっぱいの神様です。

    スサノオがテクテクと歩いていると、川のそばで「えーん、えーん」と誰かが泣いている声が聞こえてきました。行ってみると、おじいさんとおばあさん、そしてとってもきれいな娘さんが、しくしくと涙を流しています。
    「どうしたのですか?何か困ったことでも?」スサノオが優しく声をかけると、おじいさんが話し始めました。
    「実は…この国には、ヤマタノオロチという、それはそれは恐ろしい化け物がいるのです。頭が八つもあって、尻尾も八つもある、山のように大きな蛇でしてな。毎年、私たちの村から娘を一人、生贄として差し出さねばならんのです。そして今年、とうとうこのクシナダヒメが…ああ、かわいそうに…」
    おじいさんの話を聞いて、クシナダヒメはもっと悲しそうに顔を伏せました。

    スサノオは、きりっとした顔で言いました。
    「よし、わかった!そのヤマタノオロチ、この私がやっつけてあげよう。そのかわり、クシナダヒメさんを私のお嫁さんにしてくれませんか?」
    おじいさんとおばあさんはびっくりしましたが、「おお、本当ですか!ぜひお願いします!」と、涙を拭いて喜びました。

    さあ、スサノオの作戦開始です。
    まず、クシナダヒメを魔法で小さな可愛らしい櫛に変えて、自分の髪の中にそっと隠しました。「これで安全だね」
    次に、おじいさんたちに、とっても強いお酒を八つの大きな樽にいっぱい用意してもらいました。そして、家の周りに八つの門を作り、それぞれの門の前に、お酒の入った樽を一つずつ置いたのです。

    準備ができた頃、ドドドドーッ!と、ものすごい音を立ててヤマタノオロチがやってきました。八つの頭がにょろにょろと動き、赤い目でキョロキョロあたりを見回しています。
    「ん?なんだかいい匂いがするぞ?」
    オロチは八つの頭をそれぞれの樽にズボッ!と突っ込むと、お酒をゴクゴク、ゴクゴクと飲み始めました。
    「うまい!こりゃたまらん!」
    八つの樽のお酒は、あっという間になくなってしまいました。すると、ヤマタノオロチは酔っ払ってしまい、ぐーぐー、ぐーぐーと大きないびきをかいて眠ってしまいました。

    「今だ!」
    スサノオは大きな剣を抜き、眠っているヤマタノオロチに勇ましく立ち向かいました。
    ザシュッ!ザシュッ!
    スサノオは、オロチの八つの頭を一つ、また一つと切り落としていきます。
    そして、とうとう八つの尻尾も切り始めました。すると、一本の尻尾を切ったとき、カキン!と剣の先が硬いものに当たりました。
    「おや?なんだろう?」
    不思議に思ってその尻尾を裂いてみると、中からピカピカに光る立派な剣が出てきました。これが、後に「草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれる、とても有名な剣になったのです。

    こうして、恐ろしいヤマタノオロチを退治したスサノオは、櫛から元の美しい姿に戻ったクシナダヒメと結婚し、出雲の国で仲良く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。

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