画竜点睛
中国寓話
むかしむかし、中国に張僧繇(ちょうそうよう)という、とっても絵が上手な人がいました。
ある日、お寺の偉い人が張さんに頼みました。「このお寺の壁に、かっこいい竜の絵を四匹描いてくださいな。」
張さんは「お任せください!」と言って、さっそく描き始めました。
みるみるうちに、壁には生きているみたいな竜が四匹現れました。うろこも、ひげも、爪も、本物そっくり!
でも、あれ?なんだか変です。どの竜にも、目が描かれていませんでした。
集まってきた人々は不思議に思って聞きました。
「張さん、どうして竜に目を描かないのですか?」
「うーん、もし目を描いたら、この竜たちは空へ飛んでいってしまいますからね」と張さんは答えました。
「ええーっ?そんなことあるわけないよ!」「ただの絵じゃないか!」
みんなは信じられず、口々に言いました。「お願いです、張さん。ぜひ目を入れて、竜を完成させてください!」
張さんは困った顔をしましたが、みんながあまりにも言うので、仕方なく筆を取りました。
「じゃあ、二匹だけ目を入れてみましょう」
そう言って、まず一匹の竜の目に、ちょん、と黒い点を打ちました。そして、もう一匹にも、ちょん。
そのとたんです!
ゴロゴロゴロ…!ピカッ!
突然、空が暗くなり、雷が鳴り響き、稲妻が光りました。
そして、目を入れた二匹の竜が、壁からメリメリと抜け出して、うわーっと空高く舞い上がっていったのです!
あっという間に、雲の向こうへ消えてしまいました。
残された人々は、口をあんぐり。
「ほ、本当だったんだ…」
壁には、まだ目の描かれていない二匹の竜が、静かに残っていましたとさ。
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