蜀犬日に吠える
中国寓話
むかしむかし、とはちょっと違うお話だよ。
遠い遠い山の奥に、蜀(しょく)っていう国があったんだ。この国はね、いつも空がどんより曇っていて、雨がザーザー降ることが多かったんだって。だから、そこに住んでいるワンちゃんたちは、お日様をほとんど見たことがなかったんだ。空はいつも灰色か、雨でキラキラしているものだと思っていたんだね。
ある日のこと。本当に珍しく、雲ひとつない、ぴっかーんとした青空が広がったんだ!そして、空には金色に輝く、まーるくてあったかいものが見えた。そう、お日様さ!
蜀のワンちゃんたちは、それを見てびっくり仰天!
「なんだあれは!?」
「空に大きな火の玉が浮いてるぞ!」
「わ、わ、わ、こわいよー!」
ワンちゃんたちは、生まれて初めて見るお日様が、なんだかよくわからなくて、ちょっぴり怖くなっちゃったんだ。
だから、みんなで声を合わせて、
「ワン!ワン!ワンワン!」
「あっちへ行けー!ワンワン!」
って、お日様に向かって一生懸命吠え始めたんだ。
ちょうどその時、お日様を毎日見ている国から来た人が、その様子を見て言いました。
「あらあら、この国のワンちゃんたちは、お日様を見慣れていないから、びっくりして吠えているんだねえ。」
蜀のワンちゃんたちは、ただただ、初めて見るお日様に驚いていただけなんだ。他の場所では当たり前のことでも、知らないとびっくりしちゃうことがあるんだね。お日様は、ワンちゃんたちが吠えてもニコニコ笑って、蜀の国を暖かく照らしてあげたんだって。よかったね。
1355 閲覧数