狐と木彫りの頭
イソップ寓話
ある晴れた日のこと、森の中をキツネが一匹、てくてくと歩いていました。お腹がぺこぺこで、何か食べ物はないかなあと探していたのです。
そのとき、木の根元に何かキラキラ光るものを見つけました。「おや?あれは何だろう?」キツネはそっと近づいてみました。
それは、とても立派な、人間の顔の形をした木彫りの頭でした。金色に塗られていて、目も鼻も口も、まるで生きているみたいに上手に作られています。
キツネはそれを前足でちょいちょいと触ってみたり、鼻をくんくんさせて匂いをかいでみたりしました。
「わあ、なんて綺麗なんだろう!目も鼻も口も、本物の人間みたいだ。きっとすごく賢いにちがいない!」キツネは感心しました。
でも、いくらひっくり返してみても、中を覗いてみても、その頭はただの木でできていて、うんともすんとも言いません。もちろん、何かを考えたり、お話したりすることもできません。
「ふーん」とキツネは言いました。
「見た目はこんなに立派で、ピカピカしているのに、中には考えるための脳みそが、これっぽっちも入っていないんだねえ。残念だけど、これじゃあ何の役にも立たないや。」
そうつぶやくと、キツネはまたお腹をすかせて、食べ物を探しに森の奥へと歩いていきました。
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