獅子と牛
イソップ寓話
あるところに、お腹をぺこぺこにすかせたライオンがいました。
「ああ、お腹がすいたなあ。そうだ、あの大きな牛を食べよう!」
ライオンは、いつも草原で草を食べている、大きくて立派な牛に目をつけていました。でも、牛はとても力が強くて、正面から戦ってもなかなか勝てそうにありません。
そこでライオンは、ずる賢いことを考えました。
「よし、牛をだまして、僕のすみかにおびき寄せよう!」
ライオンは、にこにこしながら牛のところへ行きました。
「牛さん、牛さん、こんにちは! 実はね、今日、特別にごちそうを用意したんだ。よかったら、僕の家で一緒に晩ごはんを食べないかい?」
牛は、ライオンが自分を食べようとしているなんて夢にも思っていません。
「えっ、本当かい? それは嬉しいな!ありがとう、ライオンさん!」
牛は喜んでライオンについて行きました。
ライオンのすみかに着くと、そこには大きな焚き火と、とっても大きな焼き網、それから大きなナイフやフォークがたくさん用意されていました。でも、肝心のごちそうになるはずの、例えば羊とか、そういうものはどこにも見当たりません。
牛はあたりをキョロキョロ見回しました。
「あれ? ライオンさん、ごちそうって、もしかして…?」
牛は、こんなに大きな焼き網や道具は、自分くらい大きな動物を料理するのにぴったりだと気がつきました。そして、ライオンがよだれをたらしながら自分を見ているのを見て、ピーンときたのです!
「あ! ライオンさん、ごめん! 大事な用事を思い出しちゃった! また今度ごちそうになるよ!」
牛はそう言うと、大急ぎでその場から逃げ出しました。
ライオンは「ちぇっ、気づかれたか」と残念そうにしましたが、もう牛の姿は見えませんでした。
賢い牛さんは、あやしいなと思ったらすぐに逃げ出したので、ライオンに食べられずにすんだのでした。
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