二つの壺
イソップ寓話
川のほとりに、二つの壺がちょこんと置いてありました。一つはぴかぴかの真鍮でできた壺、もう一つは素朴な土でできた壺です。真鍮の壺は、いつも「僕は丈夫だい!」と自慢げでした。土の壺は、静かにそれを聞いていました。
ある日、空が真っ黒になり、ゴロゴロと雷が鳴り響きました。そして、ざあざあとものすごい雨が降ってきて、川の水があっという間にあふれだしたのです!
「わあ大変だ!」
二つの壺は、ごうごうと流れる川の水に、ぷかぷかと押し流されてしまいました。
真鍮の壺は、土の壺に声をかけました。
「ねえ、土の壺くん!こっちへおいでよ。一緒にかたまって流れていけば、何かにぶつかっても僕が守ってあげるよ。僕は頑丈だからね!」
真鍮の壺は、得意そうに言いました。
でも、土の壺は静かに首を横に振りました。
「ありがとう、真鍮の壺さん。でも、遠慮しておくわ。」
「どうしてだい?僕と一緒なら安心なのに。」
「だって、もし私たちがお互いにドンとぶつかってしまったら…」土の壺は続けました。「あなたは平気でしょうけど、私はきっと粉々に割れてしまうわ。だから、少し離れて流れていくことにするの。」
そう言って、土の壺は、真鍮の壺からそっと距離をとり、一人で静かに流れていきました。真鍮の壺は、ちょっと残念そうでしたが、土の壺の言うこともわかるような気がしました。
土の壺は、自分のことをよく知っていたのですね。だから、危ない目にあわずにすんだのです。
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