ある晴れた日のことです。森の王様ライオンが、大きなあくびをしました。「ふああー、今日もいい天気だけど、なんだか退屈だなあ。」

そこへ、小さな蚊が一匹、ぷーんと飛んできました。蚊はライオンの鼻先で止まると、小さな声で言いました。「ねえ、ライオンさん、僕と勝負しないかい？僕の方が強いんだぞ！」

ライオンはそれを聞いて、大きな目で蚊を見下ろし、鼻でふんと笑いました。「なんだって？お前みたいな小さな虫けらが、この百獣の王ライオン様に勝てるわけがないだろう。面白い冗談だ。」

「冗談じゃないよ！見てなさい！」蚊はそう言うと、ライオンの顔の周りをぷんぷんと素早く飛び回りました。そして、ライオンが一番いやがる、柔らかい鼻の頭や目の周りを、チクリ、チクリと刺し始めたのです。

「うわっ！痛い！こしゃくな！」ライオンは怒って、前足で自分の顔をバンバン叩きました。でも、蚊は小さくてすばしっこいので、全然当たりません。ライオンは自分の爪で顔を引っ掻いてしまい、血が出てしまいました。

「ガオー！もう許さんぞ！」ライオンは吠えながら、何度も何度も蚊を捕まえようとしましたが、蚊はひらりひらりと攻撃をかわし、チクリ、チクリと刺し続けます。

とうとうライオンは、戦うのに疲れてしまい、自分の攻撃で傷だらけになって、地面にぐったりと倒れ込んでしまいました。「もう…だめだ…降参だ…。」

蚊は得意そうに言いました。「どうだ！僕の勝ちだ！百獣の王だって、僕にはかなわないんだ！」そして、勝利の歌でも歌うかのように、ぷーんと嬉しそうに飛び去っていきました。

ところが、気分良く飛んでいた蚊は、うっかり蜘蛛の巣に引っかかってしまいました。「あれ？あれれ？動けないぞ！助けて！」蚊は一生懸命もがきましたが、蜘蛛の糸は丈夫で、どうすることもできません。

そして、静かに近づいてきた蜘蛛に、ぺろりと食べられてしまいました。
百獣の王に勝った蚊も、最後は小さな蜘蛛に負けてしまったのでした。

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