粉屋と息子とろば
イソップ寓話
あるところに、粉屋のおじさんと、その息子がいました。二人はロバを市場へ売りにいくことにしました。
「さあ、出発だ!」
最初は、おじさんと息子が歩いて、ロバを引いていきました。
すると、村の女の人たちがくすくす笑って言いました。
「あらあら、ロバがいるのに誰も乗らないなんて、もったいないわねえ。」
「なるほど、それもそうだ。」おじさんは言いました。「よし、お前が乗りなさい。」
息子がロバに乗って、おじさんが引いていくと、今度は年寄りたちが言いました。
「なんてこった!元気な若者が楽をして、年老いた父親を歩かせるなんて、親不孝者め!」
「うーん、それもそうか。」おじさんは困った顔をしました。「よし、わしが乗ろう。お前は歩きなさい。」
今度はおじさんがロバに乗り、息子が引いていくと、若い母親たちがささやきました。
「まあ、かわいそうに。あんな小さな子を疲れさせるなんて、ひどいお父さんだわ。」
「むむむ、どうすればいいんだ…。」おじさんはますます困りました。「そうだ!二人で乗ればいいんだ!」
そこで、おじさんと息子は二人でロバに乗りました。ロバはちょっと重そうでしたが、頑張って歩きました。
すると、町の入り口で男たちが言いました。
「おいおい、あのロバがかわいそうだぞ!二人も乗るなんて、まるでロバをいじめているみたいじゃないか!」
「もう、どうしたらいいんだ!」おじさんと息子はすっかり途方に暮れてしまいました。
「そうだ!こうなったら、ロバを担いでいこう!」
二人は長い棒を見つけてきて、ロバの足を縛り、その棒にぶら下げて「よいしょ、よいしょ」と運び始めました。
それを見た町の人たちは、お腹を抱えて大笑いです。
「あははは!ロバを担いでる人がいるぞ!なんて面白いんだ!」
その騒ぎにびっくりしたロバは、急に暴れだしました。
そして、橋の上でバランスを崩し、どぼーん!と川の中に落ちてしまいました。
ロバはそのまま流されていってしまい、おじさんと息子は、ロバもお金も手に入れることができませんでした。
おじさんと息子は、がっかりして言いました。
「みんなを喜ばせようとすると、結局だれも喜ばせることができないし、かえって大切なものを失ってしまうこともあるんだなあ。」
二人はしょんぼりと、とぼとぼ家路についたのでした。
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