うみうさぎちゃん
グリム童話
ある日曜日の朝、お日様がキラキラ輝いて、風もそよそよ、とっても気持ちのいい日でした。ハリネズミくんが、朝ごはんの歌を歌いながら、畑のあぜ道をのんびりお散歩していました。
そこへ、足の速い野ウサギがぴょんぴょんやってきました。野ウサギは、ハリネズミくんの短い足を見て、ぷっと吹き出しました。
「やあ、ハリネズミさん。そんな短い足で、ちょこちょこどこへ行くの?僕なんか、ぴょーんぴょーんだよ!」と、自慢げに言いました。
ハリネズミくんは、ちょっとムッとしましたが、にっこり笑って言いました。
「野ウサギさん、こんにちは。僕の足は短いけど、君と競争したら、僕が勝つかもしれないよ。」
「ええーっ?君が僕に勝つだって?ははは、面白い冗談だ!」野ウサギはお腹を抱えて笑いました。
「冗談じゃないよ。じゃあ、今からこの畑の向こうの端まで競争しようじゃないか。」とハリネズミくん。
「いいとも!望むところだ!」野ウサギはすぐにOKしました。
ハリネズミくんは、「ちょっと待ってて。奥さんにも応援に来てもらうから。」と言って、急いで家に帰りました。
そして、奥さんのハリネズミにこう言いました。
「ねえ、君、僕とそっくりだろう?今から野ウサギと競争するんだ。君は畑の向こうの端の溝に隠れていて、野ウサギが着いたら『もう着いたよ!』って言うんだ。いいね?」
奥さんも、「わかったわ、あなた!」と協力してくれることになりました。奥さんも、ハリネズミくんにそっくりだったのです。
さて、競争が始まりました。「よーい、ドン!」
野ウサギは、あっという間にびゅーんと飛ぶように走っていきました。ハリネズミくんは、最初の数歩だけ走るふりをして、すぐに近くの溝に隠れました。
野ウサギが畑の向こうの端に着くと、そこにいた奥さんハリネズミがひょっこり顔を出して言いました。
「やあ、野ウサギさん、もう着いたよ!」
野ウサギはびっくり。「ええっ?まさか!君より先に着いたはずなのに!」
「いやいや、僕が先だよ。」と奥さんハリネズミ。
「くそー!もう一回だ!」野ウサギは悔しくて、今来た道をまたびゅーんと引き返しました。
そして、スタート地点に戻ってくると、今度は本物のハリネズミくんが溝から顔を出して言いました。
「やあ、野ウサギさん、もう着いたよ!」
「な、なんだってー!?」野ウサギは目をぱちくり。信じられません。
「もう一回!もう一回だ!」
野ウサギは、何度も何度も畑の端から端へと走りました。そのたびに、ハリネズミくんか、奥さんハリネズミが「もう着いたよ!」と言うのです。
野ウサギは、息を切らして、汗をだらだら流しながら、ぜえぜえ言いながら走り続けました。
そして、とうとう73回も走ったところで、野ウサギは、もうへとへと。畑の真ん中で、ばったり倒れてしまいました。
ハリネズミくんと奥さんは、顔を見合わせてにっこり。
「やったね、あなた!」
「ああ、君のおかげだよ。」
こうして、ハリネズミくんは、賢い作戦で足の速い野ウサギとの競争に勝ったのでした。
それからというもの、野ウサギは、誰かのことを足が短いなんて言って、からかうことはなくなったそうですよ。
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