• なぞなぞメルヘン

    グリム童話
    旅に出るのが大好きな、ひとりの王子さまがいました。ある日、王子さまは遠い国のお城にやってきました。そのお城には、とても美しいけれど、ちょっと変わったお姫さまが住んでいました。

    お姫さまは、結婚相手に謎々を出すのです。「この謎々が解けたら、私と結婚できます。でも、もし解けなかったら…残念ですが、お城から出て行ってもらいますわ!」たくさんの人が挑戦しましたが、誰も解けませんでした。

    王子さまは、「よし、僕がその謎々を解いてみせるぞ!」と、お姫さまの前に進み出ました。

    お姫さまは、王子さまが賢いと聞いて、ちょっと心配になりました。「なんとかして、王子がどんな謎を出すのか、先に知りたいわ…」
    その夜、お姫さまは侍女のひとりに言いました。「王子さまの部屋へ行って、寝言を聞いてらっしゃい。何かヒントがあるかもしれないわ。」
    侍女は、体に蜂蜜をぬって、その上に鳥の羽をいっぱいくっつけて、まるで奇妙な鳥のような姿で、そーっと王子さまの部屋に忍び込みました。
    王子さまは寝たふりをしていましたが、実はぜんぶ気づいていました。そして、大きな声でわざとらしく言いました。「おお、夢を見たぞ!夢の中で、変な鳥が飛んできた。僕はそれを捕まえようとしたけど、逃げられちゃった!」
    侍女はびっくりして、お姫さまのところへ飛んで帰りました。

    次の夜、お姫さまは別の侍女に言いました。「今夜こそ、王子の寝言をしっかり聞いてきて!」
    今度の侍女は、顔も手も真っ黒になるように炭をぬりたくって、真っ黒オバケみたいな姿で忍び込みました。
    王子さまはまた寝たふりをして、大きな声で言いました。「また夢だ!今度は真っ黒な獣が出てきたぞ。追いかけっこしたけど、捕まえられなかったなあ。」
    侍女は慌てて逃げ帰りました。

    三日目の夜、お姫さまはもう我慢できません。「こうなったら、一番頼りになる侍女に行ってもらうわ!」
    その侍女は、体中に真っ白な小麦粉をたーっぷりつけて、まるで白い幽霊のような姿で行きました。
    王子さまはやっぱり気づいていて、こう言いました。「三度目の夢だ!今度は真っ白でふわふわしたものが現れた。なんだか美味しそうだったけど、食べずに見ているだけだったなあ。」
    侍女は真っ白になりながら、お姫さまに報告しました。

    さて、いよいよ王子さまが謎々を出す番です。王子さまはにっこり笑って言いました。
    「お姫さま、僕が三晩続けて見た夢の中で出会った三つのもの、それは一体何でしょう?
    一つ目は、僕はそれを追いかけたけれど、捕まえられなかったもの。
    二つ目は、それも追いかけたけれど、やっぱり捕まえられなかったもの。
    三つ目は、それは美味しそうだったけれど、食べなかったもの。
    さあ、この三つのものは、それぞれ何でしょう?」

    お姫さまは、うーんうーんと一生懸命考えましたが、さっぱり分かりません。侍女たちに聞いても、「王子さまはそんなこと言ってませんでしたわ…」と首をかしげるばかり。お姫さまは悔しくて、王子さまの「夢の本」でもないかと探しましたが、見つかりません。

    とうとう降参したお姫さまに、王子さまは答えを教えました。
    「一つ目は、蜂蜜と羽をつけた侍女さん。まるで奇妙な鳥のようでしたね。僕は夢の中で、それを追いかけましたが捕まえられませんでした。
    二つ目は、炭で真っ黒になった侍女さん。真っ黒な獣のようでした。夢の中でこれも追いかけましたが、捕まえられませんでした。
    三つ目は、小麦粉で真っ白になった侍女さん。白いお菓子のようでした。夢の中で、美味しそうだなと見ているだけで満足したのです。」

    お姫さまは顔を真っ赤にして、でも王子さまの賢さにすっかり感心しました。「まあ、あなたって本当に賢いのね!」
    そして、王子さまはお姫さまと結婚して、二人でいつまでも楽しく暮らしましたとさ。

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