• 賢い羊飼いの少年

    グリム童話
    ある国に、それはそれは賢いと評判の、小さな羊飼いの男の子がいました。その子の賢い答えは、どんな難しい質問にもピタリと当たるので、あっという間に王様の耳にも届きました。

    「ほう、そんなに賢いのか。よし、試してみよう」と、王様は男の子をお城に呼びました。
    男の子は少しも怖がらず、王様の前に進み出ました。

    王様は言いました。「わしがおまえに三つの質問をしよう。もし全部答えられたら、おまえをわが子のように扱い、この城で暮らせるようにしてやろう」
    「はい、王様。どんなご質問でしょうか?」と男の子は答えました。

    そこで王様は最初の質問をしました。「では聞くぞ。海の水は、全部で何滴あるかな?」
    男の子はにっこりして言いました。「王様、それは簡単です。世界中の川が海に流れ込まないように、全部せき止めてください。そうすれば、私が海の水滴を数えてさしあげます」

    王様は「うむ、賢い答えだ」と感心し、次の質問をしました。「では、空には星がいくつあるかな?」
    男の子は大きな紙とペンを取り出すと、てんてんてん…と、紙いっぱいに小さな点をたくさん書きました。そして言いました。「空の星は、この紙に描いた点と同じだけあります。さあ、数えてみてください。でも、目がチカチカするかもしれませんよ」と、いたずらっぽく笑いました。

    王様はまたもや感心し、「うーむ、なかなかやるな。では最後の質問だ。永遠というのは、何秒あるのかな?」
    男の子は少し考えてから、こう答えました。
    「遠い遠いポメラニアの国に、ダイヤモンドでできた大きな大きな山があります。その山は、高さも幅も一時間歩かないと登りきれないほどです。そして、百年に一度、小さな鳥がやってきて、そのダイヤモンドの山でくちばしを研ぎます。その大きな山が、鳥のくちばしで全部すり減ってなくなったとき、やっと永遠の最初の一秒が過ぎるのです」

    王様は男の子の賢さにすっかり感心しました。
    「おまえは本当に賢い子だ。約束通り、これからは私のそばで暮らし、いろいろなことを学びなさい」
    こうして、賢い羊飼いの男の子は、王様のお城で幸せに暮らしましたとさ。

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