• 金の子供たち

    グリム童話
    「ねえ、見て!森の奥に、かわいいおうちがあるよ!」金色の髪の女の子、キンちゃんは、お散歩の途中で、小さなおうちを見つけました。
    「こんにちはー!」キンちゃんはドアをトントントンと叩きましたが、返事はありません。そーっとドアを押してみると、あら、開いちゃった!
    「おじゃましまーす」とキンちゃんは中に入りました。

    ダイニングテーブルの上には、3つのお椀が並んでいました。ほかほかと湯気が立っているおかゆです。
    「わあ、おいしそう!」キンちゃんは、まず一番大きなお椀のおかゆを一口。「あちち!これは熱すぎるわ!」
    次に、中くらいのお椀のおかゆを一口。「うーん、こっちは冷たすぎる。」
    最後に、一番小さなお椀のおかゆを一口。「あっ、これはちょうどいい!おいしい!」キンちゃんは、小さいお椀のおかゆをペロリと全部食べてしまいました。

    お腹がいっぱいになったキンちゃんは、リビングルームで3つの椅子を見つけました。
    「ちょっと座ってみようっと。」まず、一番大きな椅子に。「うわ、このお父さんの椅子は、硬すぎるわ。」
    次に、中くらいの椅子に。「あら、お母さんの椅子は、ふわふわすぎて座りにくい。」
    最後に、一番小さい椅子に。「この小さい椅子は、私にぴったり!」と座ったとたん、ガシャン!あらら、椅子が壊れちゃった!「どうしよう!」キンちゃんはちょっと困りました。

    キンちゃんは、今度は二階へ行ってみました。そこには、3つのベッドがありました。
    「なんだか眠くなっちゃった。」キンちゃんは、まず一番大きなベッドに横になりました。「うーん、このお父さんのベッドは、大きくて硬すぎる。」
    次に、中くらいのベッドに。「あら、お母さんのベッドは、柔らかすぎて体が沈んじゃう。」
    最後に、一番小さいベッドに。「この小さいベッドは、気持ちいいわあ。」キンちゃんは、あっという間にすやすやと眠ってしまいました。

    しばらくすると、「ただいまー!」と、おうちにクマさん一家が帰ってきました。お父さんグマ、お母さんグマ、そして赤ちゃんグマです。
    お父さんグマは、自分のお椀を見て言いました。「あれ?誰か私のおかゆを食べたな?」
    お母さんグマも言いました。「あら、私のおかゆも誰かが味見したみたい。」
    赤ちゃんグマは、自分のお椀が空っぽなのを見て、しくしく泣き出しました。「ぼくのおかゆ、全部なくなっちゃったよー!」

    次に、リビングルームへ行くと、お父さんグマは言いました。「おや?誰か私の椅子に座ったぞ。」
    お母さんグマも言いました。「まあ、私の椅子にも誰か座ったみたいね。」
    赤ちゃんグマは、自分の椅子が壊れているのを見て、えーんえーんと大声で泣きました。「ぼくの椅子、壊れちゃったー!」

    クマさん一家は、二階へ上がってみました。
    お父さんグマは、自分のベッドを見て言いました。「むむ?誰か私のベッドで寝たな?」
    お母さんグマも言いました。「あらあら、私のベッドにも誰か寝た跡があるわ。」
    赤ちゃんグマは、自分のベッドをのぞき込んで、大きな声で言いました。「ぼくのベッドで、誰か寝てるー!あ、金色の髪の女の子だ!」

    その声で、キンちゃんはびっくりして飛び起きました。「わあ!クマさん!」目の前には、3びきのクマさんが立っています。
    キンちゃんは、あまりの驚きに、急いでベッドから飛び降りて、窓からぴょーん!
    一目散に森を駆け抜け、おうちに帰りました。

    それからキンちゃんは、もう二度とクマさんのおうちには行きませんでした。そして、知らないおうちには勝手に入っちゃいけないんだな、とちょっぴり反省したのでした。

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