リーヴとリーヴスラシル
北欧神話
むかしむかし、というほど昔でもないけれど、ずっと北の寒い国に、神さまたちが住んでいた頃のお話だよ。
その頃、世界はちょっぴり大変なことになろうとしていたんだ。大きな大きな戦いが起こって、太陽も月も星も隠れちゃって、世界中が火事になったり、水浸しになったり、寒くて暗い冬がずーっと続く「ラグナロク」っていう時が来るって言われていたんだ。神さまたちも、巨人たちも、みーんな戦って、世界は一度おしまいになっちゃうんだって。
でもね、そんな大変な時でも、生き残る人間が二人だけいたんだ。
リーヴっていう名前の女の人と、リーヴスラシルっていう名前の男の人。二人はとっても賢くて、これから起こる大変なことをちょっぴり知っていたのかもしれないね。
「このままじゃ、人間がいなくなっちゃう!」
二人は相談して、ホッドミミルの森っていう、誰も知らない、静かで安全な場所に隠れることにしたんだ。その森は、どんな嵐や火事からも守ってくれる不思議な場所だったんだって。
ラグナロクが始まると、本当に世界はめちゃくちゃ!ゴーッて風が吹いて、ドカーンって音がして、火の巨人が暴れて、大きなオオカミが太陽をパクリ!
でも、リーヴとリーヴスラシルは、ホッドミミルの森の大きな木のうろの中で、じーっと静かにしていたんだ。食べるものはなかったけど、朝になると葉っぱについたキラキラ光る朝露を飲んで、なんとか生き延びたんだ。
長い長い時間がたって、ようやく嵐は過ぎ去った。
世界はすっかり静かになって、空には新しい太陽が優しく輝きだして、緑の草やお花が地面から顔を出した。まるで生まれたての赤ちゃんみたいに、世界は新しくなったんだ。
リーヴとリーヴスラシルは、そーっと森から出てきた。
「わあ、きれい…」
二人の目には、静かで美しい新しい世界が広がっていた。
そしてね、このリーヴとリーヴスラシルから、また新しい人間がたくさん生まれて、世界は再び賑やかになったんだって。だから、今わたしたちがいるこの世界も、もしかしたらリーヴとリーヴスラシルのおかげかもしれないね。
おしまい。
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