世界蛇ヨルムンガンド
北欧神話
いたずら好きの神様ロキには、ちょっと変わった子どもたちがいました。一人は大きな狼のフェンリル、もう一人はちょっぴり怖い顔のヘル、そして三人目が、今日のお話の主人公、大きな大きなヘビのヨルムンガンドです。
神様たちの王様オーディンは、このヨルムンガンドが大きくなったら大変なことになるぞ、と心配しました。そこで、オーディンはまだ小さかったヨルムンガンドを「えいっ!」と広い広い海の中に投げ込んでしまいました。
海に投げ込まれたヨルムンガンドは、魚やクジラをたくさん食べて、ぐんぐん、ぐんぐん大きくなりました。それはもう、びっくりするくらい大きくなって、とうとう人間たちが住む世界ミッドガルドをぐるーっと一周して、自分のしっぽを「あむっ」とくわえるほどになったのです。だから、みんなはヨルムンガンドのことを「世界蛇」とも呼びました。ヨルムンガンドが怒って体を揺らすと、海が大荒れになったり、大きな波が起きたりしました。
さて、このヨルムンガンドには、とっても強いライバルがいました。それは、雷の神様トールです。トールは力持ちで、いつも大きなハンマー「ミョルニル」を持っています。トールはヨルムンガンドのことが大嫌いでした。
ある日、トールは巨人のヒュミルと一緒に船に乗って、釣りをすることにしました。トールは「うんと大きな魚を釣ってやる!」と、大きな牛の頭を釣り針につけて、海に投げ入れました。すると、ぐぐぐーっと強い引きが!「かかったぞ!」トールが力いっぱい引っ張ると、海の中から現れたのは…なんと、ヨルムンガンドでした!
ヨルムンガンドは怒って、毒の息をプシューッ!トールも負けじとハンマーを振り上げました。まさに大ピンチ!その時、怖くなったヒュミルが、慌てて釣り糸をナイフでプツンと切ってしまいました。ヨルムンガンドは、ぶくぶくと海の中に沈んでいきました。トールは「あーあ、もうちょっとだったのに!」と、とっても残念がりました。
でも、トールとヨルムンガンドの戦いは、これで終わりではありませんでした。いつかやってくる世界の終わりの日「ラグナロク」で、二人は再び出会います。その最後の戦いで、トールはヨルムンガンドをやっつけますが、ヨルムンガンドの猛毒を浴びて、トールも力尽きてしまうのです。
大きな大きな世界蛇ヨルムンガンドと、力持ちの雷神トール。二人は永遠のライバルとして、北欧神話の中で語り継がれているんですよ。
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