ユピテルと主神
ローマ神話
空の上、雲のずっと上には、たくさんの神さまたちが住んでいました。みんなとっても力持ちで、それぞれ得意なことがありました。
ある日、神さまたちが集まって、わいわいがやがや話し合っていました。「ねえ、私たちの中で一番えらい神さまは誰かしら?」「やっぱり、一番強い人がいいんじゃない?」
そこで、一番力持ちで賢いと言われていたユピテルが言いました。「よし、それなら力比べをしよう!一番すごい力を見せたものが、神さまの王様だ!」
他の神さまたちは「それはいいね!」と賛成しました。
まず、海の神さまネプトゥーヌスが、大きな三叉のほこを海に突き刺しました。すると、ザッパーン!と巨大な波が空まで届きそうなくらい立ち上がりました。「どうだ、すごいだろう!」ネプトゥーヌスは得意顔です。
次に、戦いの神さまマルスが出てきました。「フンッ!」と気合を入れると、持っていた槍を空高く投げ上げました。槍は星のようにキラリと光り、見えなくなるほど遠くまで飛んでいきました。「これぞ力の証だ!」マルスも胸を張ります。
太陽の神さまアポロは、にっこり笑って言いました。「僕の番だね。」そして、アポロがパッと手を広げると、空全体が金色に輝き、今までで一番明るい光が地上を照らしました。「この明るさには誰もかなわないだろう?」
みんな、それぞれのすごい力を見せて、神さまたちは「うーん、誰が一番かなあ」と首をひねりました。
最後に、ユピテルが静かに前に進み出ました。そして、空に向かってぐっと手を伸ばすと、指先からピカッ!とまぶしい光がほとばしりました。次の瞬間、ゴロゴロゴローッ!ドッシャーン!と、空気をふるわせるような、ものすごいカミナリが落ちたのです。そのカミナリは、まるで天と地をつなぐ光の柱のようでした。
他の神さまたちは、あまりの迫力に口をあんぐり。「わあ……!」「ユピテルのカミナリが、一番すごい……!」みんなびっくりして、そして納得しました。
こうして、ユピテルは神さまたちの中で一番えらい「神々の主」と認められました。それからというもの、ユピテルは空の上からみんなのことを見守り、時にはカミナリを使って、大切なことをみんなに知らせるようになったということです。
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