カサンドラの呪い
ギリシア神話
むかしむかし、というよりは、海がきらめく暑い国のお話です。トロイアという、それはそれは立派な街がありました。高い壁に囲まれて、お城もピカピカ。そこに、カッサンドラという名前のお姫様がいました。カッサンドラ姫は、とっても賢くて、優しい心を持った女の子でした。
ある日、太陽の神様アポロンが、空からひょいと降りてきました。アポロンはキラキラしていて、とってもかっこいい神様です。アポロンはカッサンドラ姫を見て、すぐに好きになりました。
「やあ、カッサンドラ姫。君はとても賢くて美しいね。もしよかったら、君に特別な力をあげよう。未来に何が起こるか、ぜーんぶ見えるようになる不思議な力をね。」
カッサンドラ姫はびっくりしましたが、「まあ、未来が見えるなんて素敵!」と思いました。
「はい、アポロン様。その力をくださいな。」
アポロンはにっこりして、カッサンドラ姫に未来を見る力をプレゼントしました。
でも、アポロンは「そのかわり、僕の特別な友達になってほしいんだ」と言いました。
カッサンドラ姫は未来が見える力は嬉しかったけれど、アポロンの特別な友達になるのは、なんだか違う気がしました。
「アポロン様、力は嬉しいけれど、あなたの特別な人になるのは、ごめんなさい。」
そう断ると、アポロンはちょっぴり怒ってしまいました。
「そうかい。力はもうあげてしまったから返せない。でも、こうしよう。君がこれから言う本当のことは、だーれも信じないようにしてやる!」
そう言って、アポロンは空へ帰っていきました。
それからというもの、カッサンドラ姫には未来の出来事が見えるようになりました。でも、大変!アポロンの言った通り、姫が何を言っても、誰も信じてくれないのです。
ある時、トロイアの街は大きな戦争に巻き込まれました。敵の軍隊が、大きな大きな木馬を浜辺に置いていきました。
街の人たちは「わーい!大きな木馬だ!神様からの贈り物かもしれないぞ!」と大喜び。
でも、カッサンドラ姫には見えました。その木馬の中には、敵の兵隊がたくさん隠れているのが!
「だめ!その木馬を街の中に入れちゃだめ!あれは罠よ!中に兵隊さんが隠れているの!」
カッサンドラ姫は一生懸命叫びましたが、街の人たちは「またカッサンドラ姫が変なことを言ってるよ」「未来が見えるなんて、うそだよねえ」と笑って、誰も信じてくれません。お父さんの王様でさえ、首を振るばかりでした。
とうとう大きな木馬は街の中に運び込まれ、夜になると、カッサンドラ姫の言った通り、中から敵の兵隊がたくさん出てきて、トロイアの街は大変なことになってしまいました。
カッサンドラ姫は、本当のことを言ったのに誰も信じてくれなくて、とってもとっても悲しい思いをしましたとさ。未来が見えるって、必ずしも幸せなことばかりじゃないのかもしれませんね。
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