アタランテーの競走
ギリシア神話
むかしむかしとは、ちょっと違うお話の始まりだよ。
ギリシャという太陽がサンサンと輝く国に、アタランタという、それはそれは足の速いお姫様がいました。風のように走り、鹿よりも速く、どんな男の子も彼女には追いつけませんでした。アタランタは美しくて強かったので、たくさんの若者が結婚したいと申し込みに来ました。
でも、アタランタは言いました。「私と結婚したいなら、かけっこで私に勝たなくちゃだめよ。もし負けたら…うーん、もう二度と私の前に現れないでね!」
それでも若者たちは次から次へと挑戦しましたが、みんなアタランタの速さにはびっくりして、あっという間に負けてしまいました。
そんなある日、ヒッポメネスという賢くて心優しい若者がアタランタに恋をしました。でも、ヒッポメネスは自分がアタランタより速く走れないことを知っていました。そこで、愛と美の女神アフロディーテにお願いに行きました。
「アフロディーテ様、どうか私に力を貸してください!アタランタに勝ちたいのです!」
アフロディーテはヒッポメネスのまっすぐな心に感心して、キラキラと金色に輝くリンゴを三つ渡しました。「このリンゴをレースの途中で使いなさい。きっとうまくいくわ。」
いよいよレースの日。
「よーい、ドン!」
アタランタは矢のように飛び出し、あっという間にヒッポメネスを引き離し始めました。ヒッポメネスはドキドキしながら、最初の金のリンゴをアタランタの少し前にコロコロと転がしました。
「まあ、なんてきれいなリンゴ!」
アタランタは今まで見たこともない美しいリンゴに目を奪われ、思わず立ち止まって拾い上げました。そのすきに、ヒッポメネスは少し追いつきます。
しばらく走ると、アタランタはまたぐんぐんスピードを上げました。ヒッポメネスは二つ目の金のリンゴを、今度は少し横の方へ転がしました。
「あら、また素敵なリンゴだわ!」
アタランタはまたリンゴに気を取られ、拾うためにコースから少し外れました。ヒッポメネスはまた差を縮めます。
ゴールはもうすぐそこ!アタランタは最後の力を振り絞って、風のように走り出しました。「まずい、このままじゃ負けちゃう!」ヒッポメネスは最後の金のリンゴを、今までのどのリンゴよりも遠くへ、キラキラと輝かせながら投げました。
アタランタは「わあ、あれは今までで一番きれい!」と、そのリンゴを追いかけて拾いに行きました。リンゴは本当に美しく、アタランタはしばらく見とれてしまいました。
その間に、ヒッポメネスは一生懸命走り、ついにアタランタより先にゴールテープを切ったのです!
「やったあ!」ヒッポメネスは大喜び。アタランタも、賢い方法で自分に勝ったヒッポメネスをにっこり笑顔で迎えました。
こうして、アタランタとヒッポメネスは結婚して、とても幸せに暮らしました。
でもね、二人はあまりにも幸せすぎて、金のリンゴをくれたアフロディーテ女神にお礼を言うのをすっかり忘れてしまったのです。
それを知った女神はちょっぴり怒って、二人を森で一番速くて強い動物、ライオンに変えてしまいました。
ライオンになっても、二人はいつも一緒に、広い森を仲良く駆け回っていたということです。めでたし、めでたし…かな?
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