キツネとハリネズミ
イソップ寓話
ある晴れた日のこと、森の中で、ずる賢いキツネが小さなハリネズミに出会いました。
キツネは鼻をツンとさせて言いました。「やあ、ハリネズミくん。ぼくはね、敵から逃げる方法をいーっぱい知ってるんだ。速く走ることもできるし、穴に隠れることもできる。木のふりだってできるんだぞ!君はどうだい?」
ハリネズミはのんびりした声で答えました。「へえ、それはすごいね。ぼくは、たった一つしか知らないなあ。」
キツネはそれを聞いて、ちょっと得意そうに笑いました。「たった一つだって?それじゃあ、いざという時こまるんじゃないかい?」
そのときです!遠くから「ワンワン!ワンワン!」と、猟犬たちの吠える声が聞こえてきました。そして、猟師たちの足音も近づいてきます。
「大変だ!猟師と犬だ!」キツネは慌てふためきました。「ど、どうしよう!あの方法か?いや、こっちの方法か?」キツネはたくさんの方法を知っていましたが、どれを使えばいいか迷ってしまい、オロオロするばかり。
でも、ハリネズミくんは落ち着いていました。猟犬がすぐそばまでやってくると、くるん!と体を丸めて、チクチクのトゲだらけのボールになっちゃったのです。
猟犬たちはハリネズミの周りをクンクンしましたが、トゲが痛くて手も足も出せません。「なんだ、これじゃあ面白くないや」と、犬たちはキツネの方を追いかけて行ってしまいました。
キツネは、あれこれ試しながらも、ほうほうの体でなんとか逃げ切りましたが、もうヘトヘトです。
しばらくして、ハリネズミくんがゆっくりと体を元に戻すと、キツネが息を切らして戻ってきました。
ハリネズミくんは言いました。「ぼくのたった一つの方法は、これだよ。」
キツネは何も言えませんでした。たくさん方法を知っているのもいいけれど、本当に役に立つ一つのことをしっかり知っている方が、ずっと確実なのかもしれませんね。
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