• 犬と料理人

    イソップ寓話
    大きな大きなお屋敷に、一匹の犬が住んでいました。そのお屋敷では、近々お客さんを招いて、それはそれは盛大なパーティーが開かれることになっていました。

    パーティーの前日、お屋敷の犬は台所をのぞいてみました。コックさんは大忙し!お肉をジュージュー焼いたり、お野菜をコトコト煮込んだり、甘くていい匂いのケーキも焼いています。「わあ、これはすごいごちそうだ!明日はお腹いっぱい食べられるぞ!」お屋敷の犬は嬉しくなりました。

    そして、ふと思いつきました。「そうだ!僕の友達の犬も呼んであげよう。きっと喜ぶぞ!」
    さっそく友達の犬のところへ行って、こう言いました。「ねえ、明日うちでお祭りみたいなパーティーがあるんだ。美味しいものがたーくさん出るから、君も遊びにおいでよ!」
    友達の犬は「本当かい?ありがとう、ぜひ行くよ!」と大喜びしました。

    次の日、友達の犬はワクワクしながらお屋敷へやってきました。台所からは、昨日よりももっともっと美味しそうな匂いがぷんぷんしています。友達の犬は、こっそり台所をのぞき込みました。テーブルの上には、山のようなごちそうが並んでいます。「うわあ、すごいなあ!どれから食べようかなあ」なんて考えて、嬉しくてしっぽをぶんぶん振っていました。

    その時です。忙しく働いていたコックさんが、ふと友達の犬に気づきました。
    「おや?どこから来たんだ、この犬は。お客さんの犬じゃないみたいだな。よし!」
    コックさんは、友達の犬がごちそうを狙っている泥棒犬だと勘違いしてしまいました。そして、友達の犬のおしりをひょいと掴むと、「こらっ、勝手に入っちゃだめだぞ!」と言いながら、ポイッとお屋敷の外へ放り出してしまいました。

    友達の犬は、びっくりして、しょんぼり。おしりも少し痛いし、何より悲しい気持ちでいっぱいでした。とぼとぼと自分の家に帰る途中、他の犬たちに会いました。
    犬たちは聞きました。「やあ、お屋敷のパーティーはどうだった?美味しいもの、たくさん食べられたかい?」

    友達の犬は、本当のことを言うのがなんだか恥ずかしくて、こう答えました。
    「うん、もう最高だったよ!ごちそうがあんまり美味しくて、ついつい食べ過ぎちゃったみたい。なんだか夢うつつで、どうやって帰ってきたか、あんまり覚えてないんだ。」
    本当は一口も食べられなかったのにね。

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