ヘルメスと彫刻家
イソップ寓話
神様の世界に、ヘルメスという足の速い神様がいました。ある日、ヘルメスは自分が人間たちにどれくらい人気があるのか、知りたくなりました。
そこで、普通の旅人のふりをして、人間の街へこっそり降りていきました。街を歩いていると、立派な彫刻がたくさん並んでいるお店を見つけました。お店の主人は、ちょうど新しい神様の像を彫っているところでした。
ヘルメスは店に入り、一番大きくて立派なゼウス様の像を指さして尋ねました。
「こんにちは。このゼウス様の像は、おいくらですか?」
お店の主人は答えました。「はい、そちらは金貨100枚でございます。」
次にヘルメスは、ゼウス様の隣にあった美しいヘラ様の像について聞きました。
「なるほど。では、その隣のヘラ様の像は?」
主人はにこやかに言いました。「ヘラ様は、そうですねえ、ゼウス様より少しお安く、金貨80枚でいかがでしょう。」
ヘルメスは心の中で(よし、次は僕の番だ。きっとゼウス様と同じくらい高いに違いない!)と思いました。そして、自分の姿をかたどった、翼のついた靴を履いた像を指さして、期待しながら尋ねました。
「では、あちらのヘルメスの像はいくらですか?」
すると、お店の主人はこう言いました。
「ああ、ヘルメス様の像ですか。もしお客様がゼウス様とヘラ様の像を両方お買い上げくださるなら、ヘルメス様の像は、おまけでお付けしますよ。」
それを聞いて、ヘルメスはびっくり。そして、ちょっぴりがっかりしました。自分が思っていたほど、人間たちは自分のことを高く評価してくれていないんだな、と静かに店を出ていきました。神様だって、うぬぼれてはいけないんですね。
1223 閲覧数