ねずみと小鳥とソーセージ
グリム童話
むかしむかし、とはちょっと違うけれど、あるところに、ねずみと小鳥と、なんと一本のソーセージが、とっても仲良く暮らしていました。
三人は、毎日楽しくお仕事をしていました。ねずみくんは、お水を汲んできて、火をおこし、テーブルの準備をします。小鳥さんは、森へ行って、料理に使う薪を拾ってきます。そしてソーセージくんは、お料理番。スープやお鍋の中にぷかぷか浮かんで、自分のおいしい味をじゅわーっと出すのが得意でした。おかげで、毎日とってもおいしいご飯が食べられました。
そんな幸せな毎日が続いていたある日、小鳥さんが森で薪を拾っていると、別の小鳥に会いました。その小鳥は言いました。「やあ、君は毎日せっせと薪を運んで大変そうだね。家で待ってる二人は、楽してるんじゃないのかい?」
小鳥さんは、その言葉を聞いて、なんだかもやもやした気持ちになりました。「そうかもしれない…私が一番大変なのかも…」
家に帰った小鳥さんは、ねずみくんとソーセージくんに言いました。「ねえ、たまには仕事を取り替えっこしない?私が料理をして、ソーセージくんが薪を拾って、ねずみくんがお水を汲むのはどうかしら?」
ねずみくんとソーセージくんは、ちょっとびっくりしましたが、「うん、いいよ!」と賛成しました。
次の日、さっそく新しいお仕事が始まりました。
ソーセージくんは、元気いっぱいに森へ薪を拾いに出かけました。ところが、森の途中で、くんくん鼻を鳴らす犬に出会いました。「おや、これはおいしそうなソーセージだ!」犬はソーセージくんを見つけると、ぺろりと食べてしまいました。
お家では、小鳥さんがお料理に挑戦です。「ソーセージくんみたいに、おいしい味を出さなくちゃ!」小鳥さんは、ぐつぐつ煮えるお鍋の中に、えいっと飛び込みました。でも、小鳥さんはソーセージくんとは違います。あっという間に、お鍋の中でぐったりしてしまいました。
ねずみくんは、小鳥さんが帰ってこないので心配になり、薪を拾いに行こうとしました。でも、体が小さすぎて大きな枝は運べません。「それなら、お料理を…」と火に近づきすぎたねずみくんは、あっという間に小さな体に火が移って、大変なことになってしまいました。
みんな、前のお仕事が一番自分に合っていたのに、ちょっぴり他の人をうらやんだり、新しいことを試そうとしたりしたばっかりに、悲しいことになってしまいました。もしも、みんながずっと仲良く、自分のお仕事を続けていたら、今でもおいしいご飯を食べて、楽しく暮らしていたかもしれませんね。
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