お日様がぽかぽか暖かいある日のこと、キツネくんが森の中をぴょんぴょん跳ねながら歩いていました。ところが、足元の大きな古い井戸に気づかず、うっかり足を滑らせて、深い井戸の中にどっぼーん！と落ちてしまいました。

「うわあ、どうしよう！」キツネくんは慌てました。井戸の壁はつるつるしていて、いくらジャンプしても、どうしても上まで届きません。「困ったなあ、誰か助けに来てくれないかなあ。」

しばらくすると、そこへ、のどがカラカラになったヤギさんがやってきました。ヤギさんは井戸をのぞき込むと、あら、キツネくんがいるではありませんか。
「キツネくん、そこで何してるんだい？お水は美味しいかい？」ヤギさんが聞きました。

それを聞いたキツネくんは、にっこり笑って（しめしめ、いいことを思いついたぞ）と心の中で思いました。
「やあ、ヤギさん！ここの水は最高だよ！冷たくて、甘くて、今まで飲んだ中で一番おいしいんだ！君も飲んでみないかい？」

のどが渇いていたヤギさんは、キツネくんの言葉をすっかり信じてしまいました。
「本当かい？じゃあ、僕もいただくよ！」
そう言って、ヤギさんは何も考えずに井戸の中へぴょーんと飛び込みました。

ヤギさんがおいしそうに水をゴクゴク飲んでいる間に、キツネくんは言いました。
「ヤギさん、ちょっと君の背中と角を貸してくれないかい？僕が先に井戸から出て、君を引っ張り上げてあげるよ。」

「いいとも！」ヤギさんは親切に答えました。
キツネくんはヤギさんの背中にひらりと乗り、ヤギさんの立派な角を足場にして、ぴょーんと井戸の外へ飛び出しました。

「やったあ、助かった！」キツネくんは大喜び。
井戸の中のヤギさんは、「キツネくん、早く僕を助けておくれよ！」と叫びました。

でも、キツネくんは井戸のふちからヤギさんを見下ろして、こう言いました。
「ヤギさん、井戸に入る前に、どうやって出るかもしっかり考えてから入るべきだったね。じゃあね！」
そう言って、キツネくんはさっさと行ってしまいました。

井戸の中には、ヤギさんが一人、しょんぼりと取り残されてしまいました。もっとよく考えて行動すればよかったなあ、とヤギさんは後悔しましたとさ。

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