羊飼いと狼
イソップ寓話
太陽がぽかぽか照らす丘の上で、羊飼いの男の子が、たくさんの羊の世話をしていました。
毎日毎日、同じことの繰り返し。「あーあ、なんだかつまんないなあ。何か面白いことないかなあ。」
男の子は、いたずらを思いつきました。
「そうだ!村の人たちをからかってやろう!」
男の子は、丘の上から大きな声で叫びました。
「狼だー!狼が出たぞー!助けてー!」
村の人たちは、その声を聞いてびっくり。「大変だ!男の子が危ない!」と、手に手に棒や農具を持って、大急ぎで丘へ駆けつけました。
ところが、丘に着いてみると、狼なんてどこにもいません。男の子は、慌ててやって来た村の人たちを見て、お腹を抱えて大笑い。
「あはは!うっそだよーん!狼なんていないよ!」
村の人たちは、「こらっ!心配したじゃないか!」と少し怒りましたが、「まあ、子供のいたずらか」と、ため息をついて村へ帰っていきました。
次の日も、男の子はやっぱり退屈でした。
「よし、昨日みたいに、またみんなを驚かせてやろう!」
そして、また大きな声で叫びました。
「狼だー!本当に狼が来たんだー!早く来てー!」
村の人たちは、「またあのいたずら小僧の嘘じゃないだろうな」と疑いましたが、もしかしたら本当かもしれないと思い、また丘へ駆けつけました。
しかし、やっぱり狼の姿は見えません。男の子は、またしてもケラケラ笑っています。
「また騙されたね!あー、面白い!」
これには村の人たちもカンカンです。「もう!いい加減にしなさい!二度と君の言うことなんか信じないからね!」
そう言って、ぷんぷん怒りながら帰っていきました。
それから数日後。
男の子が羊の番をしていると、茂みの中から、本物の大きな灰色の狼が、ガサガサと音を立てて現れました。狼は、おいしそうな羊たちを見て、ペロリと舌なめずりをしています。
男の子は、今度こそ本当にびっくりして、顔が真っ青になりました。
「うわー!本当に狼だ!狼が出たー!助けて!助けてくれー!」
男の子は、今までにないくらい大きな声で、必死に叫びました。
しかし、村の人たちはその声を聞いても、「どうせまたいつもの嘘だろう」「今度こそ騙されないぞ」と、誰も助けに来てくれませんでした。
男の子がいくら叫んでも、誰も見向きもしません。
とうとう狼は、安心して羊の群れに飛びかかり、何匹かの大切な羊を襲って、森の奥へ連れ去ってしまいました。
男の子は、ただ泣きながらそれを見ていることしかできませんでした。
男の子は、嘘をつき続けると、本当に困ったときに誰も信じてくれなくなるということを、悲しい気持ちで、そして痛いほどよく理解したのでした。
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