犬と影
イソップ寓話
お肉がだーいすきな、一匹の犬がいました。名前はコロにしましょうか。
ある日、コロはとっても美味しそうなお肉のかたまりを見つけました。「やったあ!ごちそうだ!」コロは大喜びで、お肉をしっかり口にくわえました。
お家に帰ってゆっくり食べようと、コロは小川にかかる細い橋を渡り始めました。
橋の真ん中まで来たとき、ふと下を見ると、水の中にもう一匹の犬がいるではありませんか!しかも、その犬もコロと同じくらい、いや、もっと大きなお肉をくわえているように見えました。
「うわあ、あいつの肉、僕のより大きいぞ!よし、あのお肉ももらっちゃおう!」コロは欲張りな気持ちでいっぱいになりました。
そして、水の中の犬を追い払おうと、「ワン!」と、元気よく吠えたのです。
そのとたん、コロがくわえていたお肉は、ポチャン!と音をたてて水の中に落ちてしまいました。
あっ!と気づいたときにはもう遅く、お肉は川の流れに運ばれて、あっという間に見えなくなってしまいました。水の中のもう一匹の犬も、もちろん、コロ自身の影だったので、一緒にお肉も消えてしまいました。
コロは、自分のお肉も、欲しかったお肉も、ぜんぶ失ってしまいました。しょんぼりしながら、お腹をすかせたまま、とぼとぼと橋を渡り終えたのでした。欲張りすぎると、大切なものまで失ってしまうことがあるんですね。
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