• 蛙の王子様

    グリム童話
    むかしむかし、太陽がきらきらと輝く、美しいお城に、それはそれは可愛らしいお姫様が住んでいました。お姫様は、金色のまりが大好きで、いつもそれで遊んでいました。

    ある日、お姫様がお城の庭の大きな古い井戸のそばで、まりをぽーんと空に投げて遊んでいると…あらら、大変!まりは井戸の中にぽちゃんと落ちてしまいました。
    「うわーん、私の金のまりが!」お姫様はしくしく泣き出しました。

    すると、どこからか声がしました。「どうしたのですか、お姫様?そんなに悲しそうな顔をして。」
    見ると、井戸のふちから、一匹の大きなカエルが顔を出していました。
    「私の金のまりが、井戸に落ちちゃったの。」
    「ふむ。もし私をあなたのお友達にしてくれて、一緒にお皿からご飯を食べさせてくれて、あなたのベッドで寝かせてくれるなら、まりを取ってきてあげましょう。」とカエルは言いました。

    お姫様は、(カエルとなんて、絶対にいや!でも、まりは返してほしいわ)と思い、「ええ、ええ、もちろんよ!早くまりを取ってきて!」と約束しました。
    カエルは井戸に飛び込み、すぐに金のまりをくわえて戻ってきました。お姫様はまりを受け取ると、大喜びでカエルのことなどすっかり忘れて、お城へ走って帰ってしまいました。
    「待って、待ってよー!」カエルは叫びましたが、お姫様は聞こえないふり。

    その日の夕食の時間です。お姫様が王様と一緒にテーブルについていると、ドアを叩く音がしました。トントン、トントン。
    「お姫様、お姫様、ドアを開けてくださいな。約束を忘れたのですか?」
    それはあのカエルの声でした。お姫様は真っ青になりました。
    王様が事情を聞くと、「約束は守らなければいけないよ」と優しく、でもきっぱりと言いました。

    お姫様はいやいやカエルを自分の隣に座らせ、お皿からご飯を分けてあげました。カエルは美味しそうに食べましたが、お姫様はちっとも食事が喉を通りません。
    食事が終わると、カエルは言いました。「ああ、お腹いっぱい。次はあなたのベッドで眠りたいな。」
    「いやー!カエルとなんて絶対に寝たくない!」お姫様は叫びました。
    でも、王様はまた言いました。「困っているときに助けてもらったのだから、約束は守りなさい。」

    お姫様は、仕方なくカエルをそっとベッドの隅に置きました。カエルはぴょんと枕元に跳び乗りました。お姫様は気持ち悪くてたまりません。
    (もう、どうにでもなれ!)とお姫様が思った、そのとたん、不思議なことが起こりました!
    カエルは、まばゆい光に包まれ…なんと、立派な王子様に変身したのです!

    王子様は言いました。「悪い魔女に魔法をかけられて、カエルの姿にされていたのです。あなたが約束を守ってくれたおかげで、魔法が解けました。ありがとう!」
    お姫様はびっくりしましたが、とても喜びました。王子様はとても優しくて、かっこよかったのです。

    次の日、王子様を迎えに、立派な馬車がやってきました。馬車を引いていたのは、王子様の忠実な家来ハインリヒです。ハインリヒは、王子様がカエルにされたとき、悲しみのあまり胸が張り裂けないように、三本の鉄の輪をはめていたのです。王子様が無事だったのを見て、喜びのあまり、その鉄の輪が大きな音を立てて、パチン、パチン、パチンと弾け飛びました。

    こうして、お姫様と王子様はすぐに仲良しになり、やがて結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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