• 若き巨人

    グリム童話
    あるところに、それはそれは小さな男の子が生まれました。でも、びっくりするくらい、ぐんぐん、ぐんぐん大きくなったのです。食べる量もすごくて、お父さんは「これじゃあ、うちの食べ物が全部なくなっちゃうよ」と困ってしまいました。

    大きくなった男の子は言いました。「お父さん、僕、旅に出るから、丈夫な鉄の杖を作ってくれない?」
    お父さんは鍛冶屋さんに頼んで、重い鉄の杖を作ってもらいました。でも、男の子が受け取ると、「ポキン!」と簡単に折ってしまいました。
    「もっともっと重いのじゃないとダメだよ!」
    二本目も、もっと重く作ってもらいましたが、やっぱり「ポキン!」。
    三度目に、それはそれは重くて太い鉄の杖を作ってもらうと、男の子はにっこり。「うん、これならいいや!」

    男の子は鉄の杖を持って旅に出ました。
    まず、鍛冶屋さんのところで働くことになりました。親方が金床を打つように言うと、男の子は力いっぱい鉄の棒を振り下ろしました。すると「ドッカーン!」というすごい音と一緒に、金床は地面深くにめり込んでしまいました。
    親方はびっくり仰天。「こ、こわい!もうクビだ!でも約束だから、お給料の代わりに、一発だけ殴らせてくれ。」
    男の子は「いいよ」と言って、親方をヒョイっと軽く叩きました。すると親方は、空の彼方へピューッと飛んでいってしまいました。

    次に、男の子は大きなお屋敷の旦那さんのところで働くことになりました。
    旦那さんは言いました。「森へ行って、薪をどっさり取ってきておくれ。」
    男の子は森へ行くと、大きな木を何本も根っこから、うんとこしょ、どっこいしょと引っこ抜いて、お屋敷に持って帰りました。旦那さんは口をあんぐり。

    「じゃあ、井戸から水をくんできてくれ。」
    男の子は井戸へ行くと、井戸を丸ごと、よいしょっと持ち上げて持ってきました。旦那さんはまたまたびっくり。

    「それなら、納屋で麦を打ってくれ。」
    男の子が力いっぱい麦を叩いたら、お米が全部パーっと飛んでいっちゃって、納屋は空っぽになりました。

    旦那さんは、この力持ちを追い出すために、ある晩、こう言いました。「あそこの古い水車小屋にはお化けが出るんだ。もし一晩そこで過ごせたら、小屋の中にある宝物をお前にやろう。」
    男の子は平気な顔で水車小屋に入り、火を焚いて暖まりました。
    夜中になると、不気味な声がして、お化けたちがゾロゾロ出てきました。テーブルの周りに座って、気味の悪いカードゲームを始めました。
    男の子は言いました。「おいらも混ぜてくれよ!」
    お化けの一人が「お前みたいな人間が混ざれるか!」と怒鳴りました。
    「なんだと!」男の子はお化けの親分みたいなのを捕まえると、テーブルの脚で思いっきり叩きました。他のお化けたちはキャーキャー逃げていきました。

    朝になると、旦那さんがおそるおそるやってきました。男の子はピンピンしていて、「やあ、旦那さん。お化けはみんなやっつけたよ。宝物はどこだい?」と言いました。
    旦那さんは震えながら、たくさんの金貨を男の子に渡しました。

    若者はそのお金で大金持ちになり、その後も元気に暮らしましたとさ。

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