オーディンの隻眼とミーミルの泉
北欧神話
神様たちの王様、オーディンは、いつも「もっともっと、いろんなことを知りたいなあ」と考えていました。「世界の秘密や、未来のことも、ぜーんぶ知りたい!」
ある日、オーディンは「ミーミルの泉」という不思議な泉のことを聞きました。「その水を飲むと、ものすごく賢くなれるんだって!」オーディンは、わくわくしながら、その泉を探しに出かけました。
泉は、大きな木の根っこに隠れるようにして、静かに水をたたえていました。そして、そのそばには、白くて長いひげのおじいさん、賢い巨人ミーミルが座っていました。ミーミルは泉の番人です。
オーディンは言いました。「ミーミルさん、どうかこの泉の水を一口飲ませてください。賢くなるためなら、何でもします。」
ミーミルは、じっとオーディンを見て、ゆっくりと首を横に振りました。「この泉の水は、ただでは飲めないのだよ、オーディン。本当に賢さを求めるなら、大切なものを差し出さなくては。」
オーディンは尋ねました。「大切なものとは、何ですか?」
ミーミルはオーディンの片方の目を指さして言いました。「お前のその、きらきらと輝く片目だ。」
オーディンはびっくり!「ええっ、僕の目!?」片方の目が見えなくなるなんて、とても怖いことです。でも、オーディンは賢くなるためなら、どんなことでもするつもりでした。世界のすべてを知るためには、それくらいの覚悟が必要だと感じたのです。
少し考えた後、オーディンは決心しました。「わかりました。私の片目を差し出しましょう。」
そして、オーディンは勇気を出して、自分の片方の目をミーミルに差し出しました。ミーミルはそれを受け取り、オーディンに泉の水を角杯に汲んでくれました。
オーディンはゴクンと、その水を飲み干しました。するとどうでしょう!オーディンの頭の中に、今まで知らなかったたくさんの知識や知恵が、キラキラと流れ込んできました。世界の始まりから終わりまで、星の動きや、人々の心の中まで、まるで手に取るようにわかるようになったのです。
片方の目はなくなってしまいましたが、オーディンは世界で一番賢い神様の一人になりました。それからというもの、オーディンは片目でも、誰よりも遠くまで、そして深く物事を見通すことができるようになったのです。だから、絵や像のオーディンは、よく片方の目を隠しているか、持っていない姿で描かれるんですよ。
1147 閲覧数