アフロディーテの誕生と愛の物語
ギリシア神話
みんな、キラキラ光る広い海を見たことあるかな? 今日はね、その海から生まれた、とーっても美しい女神さまのお話だよ。
ある晴れた日のこと。青くて大きな海のまんなかで、ふわふわ、きらきらの泡が、たくさんたくさん集まってきたんだ。そしてね、その泡の中から、まるで朝の光みたいにまぶしい、それはそれは美しい女神さまが、すーっと静かに現れたの。名前はアフロディーテ。泡から生まれたから、そんな名前がついたんだって。
アフロディーテがあまりにもきれいだったから、そよ風は優しく彼女の金色の髪をなでて、海の波はきらめくしずくで彼女を飾り、岸辺には可愛いお花がいっせいに咲いて、アフロディーテの誕生をお祝いしたんだ。
優しい西風のゼフュロスさんが、アフロディーテを貝がらの舟に乗せて、花の咲き乱れるキプロスという島へ運んであげた。そこから、アフロディーテは神さまたちが住むオリンポスの山へ行ったんだ。オリンポスの神さまたちは、アフロディーテの美しさを見て、みんなびっくり!「まあ、なんてきれいなんだろう!」って、ため息をついたほどだよ。
神さまの王様ゼウスは、アフロディーテがあまりに美しいので、神さまたちが彼女をめぐってケンカをしないようにと考えた。そして、ちょっぴり足が不自由だったけれど、とても心が優しくて、火と鍛冶が得意なヘパイストスという神さまと夫婦にしてあげたんだ。ヘパイストスは、アフロディーテのために、それはそれは見事な首飾りや腕輪をたくさん作ってプレゼントしたそうだよ。
アフロディーテにはね、エロスっていう、小さくて可愛い翼を持った息子がいたんだ。エロスはいつも弓矢を持っていてね、彼が金の矢を射ると、射られた人は誰かを大好きになっちゃう。でも、鉛の矢を射られると、今度は大嫌いになっちゃうんだから、大変! エロスは時々、いたずらをして、神さまや人間たちをドキドキさせていたんだって。
ある時、アフロディーテは、アドニスという、とっても美しい人間の若者に出会って、大好きになった。アドニスもアフロディーテのことが大好きで、二人は森や野原で楽しく遊んで過ごしたんだ。でもね、アドニスは狩りが大好き。アフロディーテは「危ないから、大きな動物には気をつけてね」って、いつも心配していたんだ。
ところがある日、アドニスは大きなイノシシに追いかけられて、怪我をして遠いところへ行ってしまったの。アフロディーテは悲しくて悲しくて、たくさん涙を流したんだ。そのアフロディーテの涙と、アドニスが流した血から、真っ赤できれいなアネモネという花が咲いたと言われているよ。
アフロディーテは、そんな悲しいこともあったけれど、愛と美しさの女神として、今も空の上から私たちを見守ってくれているんだ。そして、世界中に美しいものや、誰かを大切に思う優しい気持ちを、そっと届けてくれているのかもしれないね。
2105 閲覧数