精衛、海を填む
中国寓話
むかしむかし、太陽の神様エンテイには、ジョカという名前のかわいい娘がいました。ジョカは、キラキラ光る広い海が大好きでした。
ある晴れた日、ジョカは「海で遊んできまーす!」と元気よく言って、東の大きな海へ出かけました。小さな船に乗って、うれしそうに歌いながら、どんどん沖へと進んでいきました。
ところが、空が急に真っ暗になり、ゴロゴロと雷が鳴り始め、ビュービューと強い風が吹き荒れました。大きな大きな波がザッパーンと船に襲いかかり、あっという間にジョカの小さな船はひっくり返ってしまいました。かわいそうなジョカは、助けを呼ぶ間もなく、冷たい海の底へと沈んでしまったのです。
でも、ジョカの魂は消えませんでした。ジョカは、小さくて可愛らしい鳥に生まれ変わりました。その鳥は「ジンウェイ」と呼ばれました。ジンウェイは、自分を飲み込んだ大きな海がにくくてたまりません。「うう、悔しい!あの大きな海を、いつか必ずいっぱいにしてみせる!」と心に誓いました。
それからというもの、ジンウェイは毎日毎日、西の山から小さな木の枝や石ころをくわえてきては、東の海へ「ポチャン、ポチャン」と落とし始めました。
広い広い海は、ジンウェイの姿を見てクスクス笑いました。「おい、ちっちゃな鳥さんよ。そんな小さな石ころで、この広い私を埋められるとでも思っているのかい?」
ジンウェイは負けません。くちばしに石ころをくわえたまま、海に向かって言いました。「見てなさい!千年たっても、一万年たっても、私は絶対に諦めないわ。いつか必ず、この海をいっぱいにしてみせるんだから!」
そして、ジンウェイは今日も、明日も、その次の日も、せっせと山と海を往復し、小さな木の枝や石ころを運び続けています。たった一羽の小さな鳥ですが、その心は誰よりも強く、諦めないことの大切さを、私たちに教えてくれているのかもしれませんね。
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