ポセイドンとアテナの競い
ギリシア神話
むかしむかしよりも、もっとずっと昔、神さまたちが地上を歩いていたころのお話です。
ギリシャの国に、新しくてピカピカの街ができました。でも、この街にはまだ名前も、守ってくれる神さまもいませんでした。
そこに、「この街はわしが守る!」と名乗り出たのが、海の神様ポセイドンです。ポセイドンは、三本の歯がついた大きな矛(ほこ)を持っていて、海を荒らすことも、静めることもできる、とっても力持ちの神様でした。
すると、「いいえ、私がこの街を守りますわ」と現れたのが、知恵と戦いの女神アテナです。アテナは、とっても賢くて、いつも人々の役に立つことを考えている女神様でした。
さあ、困りました。街の人々は、どちらの神様に守ってもらうか決められません。
そこで、一番偉い神様ゼウスが言いました。「よし、二人とも街の人々にとって一番素晴らしい贈り物をしなさい。そして、人々が選んだ方が、この街の守り神となるのだ。」
ポセイドンは自信満々です。「ようし、見ておれ!」
彼は持っていた三叉の矛を、エイッ!と力強く地面に突き刺しました。すると、どうでしょう!地面から勢いよく水が湧き出てきました。
「どうだ!これは塩辛い泉だ。これでいつでも海の幸を思い出せるし、船だって作れるぞ!」ポセイドンは得意げに言いました。
街の人々は「おおーっ!」と驚きましたが、その水を飲んでみると、「うーん、しょっぱい…これでは飲めないねえ」と少し困った顔をしました。
次にアテナの番です。アテナはにっこり微笑むと、静かに地面に手を触れました。すると、そこから一本の若木がにょきにょきと生えてきて、あっという間に立派な木になりました。その木には、緑色の実がたくさんなっています。
「これはオリーブの木です」とアテナは言いました。「この実は食べられますし、絞れば油が取れます。その油は料理にも使えるし、灯りにもなります。そして、この木は丈夫なので、家具や道具も作れますよ。」
街の人々はオリーブの実を食べてみました。「おいしい!」油を灯してみると、部屋が明るくなりました。「これは素晴らしい!」
さあ、街の人々はどちらの贈り物が良いか話し合いました。
ポセイドン様の泉もすごいけれど、アテナ様のオリーブの木は、食べ物にもなり、油にもなり、木材にもなる。本当に毎日役に立つものばかりです。
「私たちは、アテナ様の贈り物がいいです!」
みんなの意見は一致しました。
こうして、アテナがその街の守り神になりました。そして、その街はアテナの名前をもらって、「アテネ」と名付けられたのです。
ポセイドンは少し残念そうでしたが、アテナの賢い贈り物には感心していました。そしてアテネの街は、アテナに守られて、その後ずっと栄えたということです。
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